強迫性障害(OCD)

強迫性障害とは?

強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder、OCD)は、不安や恐怖を和らげるために何度も同じ行動を繰り返したり、頭の中で特定の考えが止まらなくなったりする精神的な疾患です。この状態が日常生活に支障をきたし、本人が「やめたい」と思っても止められないことが特徴です。

当院では、土日祝日、夜の時間帯など、患者さんのご希望に合わせて診察させていただきますので、日常生活に支障をきたすまえに、お気軽にご相談ください。

 

強迫性障害の主な症状

強迫性障害(OCD)の症状は「強迫観念」と「強迫行為」の2つに大きく分けられます

1.強迫観念(Obsessions)

頭の中に繰り返し浮かぶ考えやイメージで、本人が不快に感じるものです。代表的なものには

  • 汚染や病気への恐怖:「手を洗わなければ病気になる」といった考えが頭から離れない。
  • 加害の恐怖:「自分が誰かを傷つけるのではないか」といった思いが浮かぶ。
  • 秩序や完璧さへのこだわり:物が「正しい位置」にないと気が済まない。

2.強迫行為(Compulsions)

強迫観念からくる不安を解消するために、無意識に繰り返される行動です。たとえば

  • 過剰な手洗い:手が荒れるほど何度も洗う。
  • 確認行動:ドアの施錠や火の元を何度も確認する。
  • 数を数える:特定の回数でなければ安心できない。

これらの症状は一時的に不安を和らげるものの、すぐに再び不安が押し寄せるため、悪循環に陥りやすくなります。

強迫性障害の原因

強迫性障害の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。

1.脳の機能異常

前頭前野(思考や判断を司る部分)と基底核(行動を調整する部分)の異常な働きが原因とされています。

2.神経伝達物質の不均衡

セロトニンという脳内の化学物質の不足や異常な働きが関係している可能性があります。

3.遺伝的要因

家族にOCDの患者がいる場合、発症リスクが高まることが知られています。

4.環境要因やストレス

重大なライフイベント(例えば、トラウマや大きなストレス)によって発症することもあります。

強迫障害の検査と診断方法

強迫障害の診断には、専門医による問診や評価が中心となります。具体的には

1.問診

強迫観念や強迫行為がどの程度日常生活に影響を与えているかを確認します。
例:「特定の行動をどのくらいの頻度で行っていますか?」「それをやめたいと思っても止められませんか?」

2.精神状態の評価

他の精神疾患(うつ病や不安障害など)との関連性も調べます。

3.診断基準

DSM-5(精神障害の診断基準)などに基づいて診断されます。

場合によっては、脳の画像検査(MRIなど)を用いることもありますが、主に他の原因(脳腫瘍や神経の問題)を除外するために行われることが多いです。

強迫障害の治療法

1.認知行動療法(CBT)

特に「暴露反応妨害法(ERP)」が効果的です。

  • 暴露法:患者が不安を感じる状況に少しずつ慣れさせます。
  • 反応妨害:不安を感じた際に強迫行為をしないように訓練します。

2.薬物療法

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):セロトニンの働きを改善することで、症状を軽減します。
    例:フルボキサミン、パロキセチンなど。(例は不要。患者さんが「この薬が欲しいと言ってくる可能性があるため。)
  • 抗精神病薬:SSRIが効果を示さない場合に追加されることがあります。

3.入院治療(重症の場合)

症状が重い場合、専門施設での集中治療が必要になることがあります。

強迫障害の予防と対策

完全に強迫障害を予防する方法は確立されていませんが、症状を軽減したり悪化を防ぐための対策はあります。

1.ストレスの管理

ストレスはOCDを悪化させる要因の一つです。日常的にリラックスする時間を確保し、ストレスをため込まないようにしましょう。

2.十分な睡眠と運動

睡眠不足や運動不足も脳の働きに影響を与えるため、日常生活の見直しが重要です。

3.早期の治療介入

初期段階で専門医に相談することで、症状が重くなるのを防げる場合があります。

4.セルフヘルプとサポートグループ

同じ症状を持つ人たちとの交流は、孤独感を和らげ、回復の助けとなることがあります。

強迫性障害はつらい症状を伴いますが、適切な治療を受ければ改善することが可能です。一人で抱え込まず、早めに専門医に相談することが大切です。また、家族や友人のサポートも回復において重要な役割を果たしますので、周囲と積極的にコミュニケーションを取りましょう。